AUTOSAR技術習得のための学習ステップを紹介

ソフトウェア開発

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フリーランス向けメディアfreelance hubさんのお役立ちコンテンツ、組み込み系のスキルを高めたい方必見!現役エンジニアおすすめの勉強法を紹介で、当サイトのブログ記事「AUTOSAR勉強方法をわかりやすくステップ別に紹介」を紹介していただきました。

組み込み系のスキルを高めたい方必見!現役エンジニアおすすめの勉強法を紹介
家電製品やIoT技術には欠かせない職種である組み込みエンジニア。近年その需要は高まりをみせています。組み込みエンジニアとして活躍するには、ソフトウェアだけでなくハードウェアの知識とスキルが欠かせません。 そこで今回は、組み込みのスキルを習得するうえで参考になる勉強法の記事を集めてみました。マイコン技術やArduino言...

はじめに

現役組み込みソフトウェアエンジニアのです。

車載組込ソフトウェア開発者なら押さえておきたい技術の一つがAUTOSARですが、以下のような理由から学習難易度が高いと感じています。

  • AUTOSAR公式ドキュメントが多すぎてどれから読めばいいかわかりにくい
    • 大量のモジュール…
    • 1モジュールあたりの100ページ越えの仕様書…
  • 日本語ドキュメントが少ない
  • 大抵の日本語資料にはベンダーのソリューションの紹介が混ざっている
    • 初学者には純粋なAUTOSARに関する情報か判別が難しい

そこでこの記事では

  • AUTOSARについて学習し技術を身に着けたい
  • AUTOSAR仕様(AUTOSAR Specification of xxx)を読み進められるようになりたい
  • でも勉強の仕方がわからない
    • どこから情報を得たらいいかわからない
    • 何から学べばいいかわからない

そんな初学者に向けて段階的な学習ステップとオススメのドキュメントや講座を紹介します。

目標設定

この記事はAUTOSARについて個人でスキル習得できるようになること=本家AUTOSAR仕様(AUTOSAR Specification of xxx)を読み進められるようになることと置き換え、そこに向けた段階的な学習ステップを紹介するものです。



Step1:Vector社の「はじめてのAUTOSAR」を読む

まずはAUTOSARの概要を理解することから始めましょう。

特徴

  • 無料で読める
  • 日本語で書かれている
  • 図解が多くわかりやすい

AUTOSARベンダーの中でも最大手の一角であるVector社が提供する「はじめてシリーズ」は車載ソフトウェアエンジニアならご存じの人は多いのではないでしょうか。このシリーズはCANやLINなどの通信プロトコルやAUTOSARといった基礎技術について入門レベルの情報をまとめた技術解説書で、Vector社のホームページ上で無料で公開されています。「はじめての」と名前にあるだけあってシリーズ全体通してポイントが端的にまとまっており図も多く読みやすいドキュメントです。このシリーズに「はじめてのAUTOSAR」があるので、まずはそれを一読してAUTOSARの概要を抑えましょう。

リンク:はじめてのAUTOSAR(For Beginners AUTOSAR) – Vector

その他のはじめてシリーズ

https://www.vector.com/jp/ja/know-how/vj-beginners/

AUTOSAR以外もVector社のはじめてシリーズは非常に読みやすいです。HPからはPDF版が閲覧できますが、展示会などでVector社のブースをのぞくと紙冊子版が置いてあることがあります。私も数冊持っていますが職場へのお土産(?)として持ち帰る人も多いのではないでしょうか。

Step2:TOPPERS外部仕様を読む

AUTOSAR公式ドキュメントは英語表記のため英語が得意な方でないとちょっとハードルが高いです。このステップでは日本語のドキュメントでAUTOSARの詳細仕様に触れてみましょう。

特徴

  • 無料で読める
  • 日本語で書かれている
  • 本家AUTOSAR仕様の和訳がある

TOPPERSプロジェクトは、(中略) 組込みシステム構築の基盤となる各種のソフトウェアを開発し、良質なオープンソースソフトウェアとして公開することで、組込みシステム技術と産業の振興を図ることを目的とした特定非営利活動法人である。

Wikipedia- TOPPERSプロジェクトより

車載のみならず組み込みシステムの基盤ソフトウェア開発全般に大きく貢献しているTOPPERSプロジェクトですが、AUTOSARについても情報が充実しています。特にAUTOSAR CP(Classic Platform)のOS、Com、Wdg、RTE等について外部仕様が公開されています。この外部仕様は本家AUTOSAR仕様書であるAUTOSAR Specification of xxx(モジュール名)をベースとして、TOPPERSプロジェクトにて必要な拡張・修正を加えた日本語ドキュメントです。誤解を恐れず言えば(ほぼ)日本語版AUTOSAR仕様書といったところでしょうか。もちろん本家AUTOSAR仕様そのままでない部分が含まれますが、仕様番号の記載方法が定義してあり一目で区別できるようになっています。初めのうちはTOPPERS外部仕様とAUTOSAR仕様を並べながら読み進めると、公式ドキュメントが読みやすくなると思います。

閲覧方法

TOPPERSのホームページにアクセスしていただき、サイドのメニューから開発成果物 > AUTOSAR関連 > TOPPERS/A-xxxxxをクリックすると「次世代車載システム向けxxx外部仕様書」のリンクがあるのでそちらから参照できます。

TOPPERSプロジェクト/INDEX
TOPPERS Project

外部仕様リンク



Step3:enPit-Pro EmbのAUTOSAR関連講座を受講する

AUTOSARの概要・部分的な詳細仕様まで把握できたなら、次はより実践的で専門的な知識を身につけましょう。

特徴

  • AUTOSAR技術について実践的な知識を習得できる
  • AUTOSAR関連だけでも複数の講座がある
  • 教科書として配布されるテキストが読みやすく持ち帰り後も復習に役立つ
  • 受講料が個人負担としては高額

enPitは「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成」を掲げる文部科学省推進の全国プロジェクトです。enPitの中の社会人向けプログラムであるenPit-Proは技術産業に従事する社会人に向けた実践的かつ専門的な短期実践教育プログラムです。要するに社会人向けに専門分野の講義を大学が開いてくれる仕組みです。このenPit-Proには5つの領域があり、その1つに組み込みソフトウェア領域を対象としたenPit-Pro Embというプログラムがあります。

enPit-Pro EmbにはAUTOSARに関する複数の講座がラインナップされています。AUTOSARについて授業形式で学べる貴重な場となっており、AUTOSAR技術の習熟度に関わらずより理解を深めることができると思います。またほとんどの講座で冊子型のテキスト資料が配布されることも特徴の一つで、持ち帰って復習する際に非常に便利です。

魅力的な講座を多く備えているのですが一方で受講料が個人負担額としては高額(1日8時間開催の講座で¥30,000~)なため所属組織の教育費から受講料を支払ってもらう等の形での受講がおすすめです。

enPiT-Pro Emb | 文部科学省「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成」採択事業 - 組込みシステム技術者のための技術展開力育成プログラム

Step4:AUTOSAR公式ドキュメントを読む

AUTOSARを使いこなす技術を身に着けるためにはいずれAUTOSARの公式ドキュメントに目を通さなければなりません。ここからは武者修行です。

ここまで述べてきた3つのステップを全てこなしているとすれば、本家AUTOSAR仕様書(AUTOSAR Specification)もだいぶ読み進められるようになっているのではないでしょうか。

https://www.autosar.org/

AUTOSAR公式ドキュメントの読み方例

参考までに、私がAUTOSARの公式ドキュメントを読み進めていった流れを紹介します。

  1. 自分がよく知っているモジュールのAUTOSAR Specificationを一通り読む
    • このときTOPPERSの外部仕様を参考書として一緒に読んでいました
  2. 今まで詳しくなかったモジュールのAUTOSAR Specificationを読む
    • 1で読んだモジュールと関連度の高いモジュールを選ぶと読みやすいです
  3. AUTOSAR methodologyを読む
    • AUTOSARを駆使した開発にはメソドロジの理解が必須と途中で気が付いたためです



まとめ

この記事ではAUTOSAR仕様そのものに関する学習の進め方の解説を軸に据えましたが、AUTOSAR自体は体系的な技術なので他にも様々な難しさがあります。そのため、この記事を読んでいただいた方の期待するポイントを解決できていないこともあると思います。私もまだまだ勉強中の身ですので上記以外にもAUTOSARについて役立つ情報や質問があればコメントやTwitterで教えて頂けるとありがたいです。

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