2:6:2の法則から組織パフォーマンスを上げる対策を考える

マネジメント

2:6:2の法則とは?

2:6:2の法則とは、パレートの法則から派生した法則で、どのような組織・集団であっても「優秀な人:普通の人:できない人(むしろ足を引っ張る人)」の割合が20%:60%:20%になるという法則です。262の法則は、かなり多くのことに適用できると考えられており、先ほどの優秀・普通・できないの2:6:2だけでなく、どのような集団であっても構成要素の上位:中位:下位をの比率が2:6:2になるという法則とも解釈されています。例えば、

  • 社会では、高額所得者が2割:庶民が6割:貧困層が2割
  • 自分に対して、好意的な人2割:なんとも思ってない人6割:嫌いだと思っている人2割
  • アリの群れでは、働き者のアリが2割:普通に働くアリが6割:怠け者アリが2割

など、集団に対して、色々な面で内訳が2:6:2になると考えられます。また、例に挙げたアリのように人間以外の集団についても同様の比率が成立すると言われています。そこから転じて別名、働きアリの法則とも呼ばれています。

この2:6:2の法則をもとに、どうしたら上位2割の優秀な人材を増やし、強い組織を作ることができるかを考えてみます。

下位2割を取り除いても効果はない

この法則の通り「優秀な人2割:普通の人6割:できない人2割」の組織を思い浮かべると、一見対策は簡単です。誰もが「できない人(下位2割)を取り除いたけばよいのでは?」と考えるでしょう。そうすることで優秀な人と普通の人だけで構成される組織になります。できない人に足を引っ張られなくなる分、組織のパフォーマンスがの向上が見込めると考えるのはごく当然ことです。しかし、この262の法則の対策はそう簡単な話でなく、残った上位・中位の8割の人員の中から新たに下位2割に当たる人が現れるとさてれいます。そのため、下位2割を取り除いても組織パフォーマンスが向上するとは言えません
ならば組織全体に教育の機会を与える等、地道で一般的なパフォーマンス向上方法をとるべきではないか、もちろんそれも一定の効果があるとは思います。しかし、それだけではつまらないので別のアプローチを考えてみます。



対策:上位2割をあえて取り除く

262の法則を題材に、組織のパフォーマンスを上げるための策を考えてみます。
先の例の通り、下位2割を取り除いても上位・中位だけで構成された組織から下位2割が自然に発生するのであれば、逆のアプローチをとりましょう。つまり、上位2割の優秀な人員をあえて組織から取り除き、残った人員の中から上位2割にあたる人員が育つような環境を作るということです。とはいえ、いきなり上位2割の優秀なメンバーをゼロにしてしまうと問題だと思いますので、例えば20人の組織であれば、262の上位2割にあたる4人の優秀なメンバーの1~2人に対して、他のチームや組織への移動・出向を提案するのです。本当にそんなことをしてうまくいくのか、いくつか理由を挙げて考えてみます。

優秀な人は時に邪魔者

優秀なメンバーがいるチームで、その中位~下位の80%の人たちのことを考えてみると、彼らは心のどこかでこう思っている部分があります。

「どうせ優秀さんがやるから自分はやらなくて大丈夫」

「リーダーはまた優秀さんに頼る。自分は頼られない。」

このように、自分よりも優秀なメンバーがチーム内にいることで、中位・下位のメンバーは自らのチャレンジを無意識に制限している場合があります。明らかに自分よりも秀でた人がいる環境で、それでも一歩前に出るのは勇気の要ることです。上位2割のメンバー数を意図的に減らすことで、中位・下位のメンバーの成長の機会をつくることができるのではないでしょうか。

リーダーに求められる勇気ある決断

とはいえ組織のリーダーの立場に立つと、優秀な上位2割の人たちを手放したくはないでしょう。
優秀な人はその分だけ仕事をこなしてくれています。彼らを失うことは組織のアウトプットに直結します。自分の組織のアウトプットを低下させることに対して前向きになれるリーダーは中々いないでしょう。しかし、それは短期的なスパンでしか物事を考えていない、長期的な視野の欠けたリーダーの利己的な考えでしかありません。確かに、優秀な人材を手放すことで、手放した直後のチームのパフォーマンスは低下するでしょう。しかし先にも述べたように、優秀な上の2割がいなくなることで、中位・下位のメンバーが育ち、いずれパフォーマンスが伸びることが期待できます。組織を率いるリーダーなら、こういった長期的な組織成長の戦略は重要になってきます。

優秀な人は自ら外へ向かう

「優秀な2割のメンバーを手放したのに、下が思うように育たなかったらどうするんだ!」
そんな声が聞こえてきそうなことを書きましたが、リーダーが自ら手放すかどうかによらず、そもそも優秀な上の2割はの人たちは勝手に出ていく可能性が高いことを頭に入れておく必要があります。例えば、優秀な人は自分の役割にあたるタスクを全てマスターするのも早いわけですが、こういった人たちは時間が経つにつれて「このままでいいのか、もっと自分を伸ばす環境はないか、世界には同世代でもっと輝いている人がいるのに…」といった現状に退屈や不満を感じるようになっていきます。優秀な人たちには「向上心」と「主体性」という共通の特徴があるのです。
向上心は外に目を向けさせ、より良い仕事のできる場所や、高いインセンティブや成長の機会を得られる場所を自ら模索することでしょう。そして、持ち前の主体性を発揮して、そこへ向かって自ら進んでいきます。結果として、いくらリーダーが引き留めても、優秀な人ほど、いつか自らの決断で組織外へ出ていこうとするというわけです。

あえて送り出すことのメリット

自らの成長や新たなチャンスに挑もうという人を引き留めるのは難しいことです。ならば逆に「君ならやれるよ、がんばっておいで」「〇〇にチャレンジしてくれる人材を探しているんだけど、君なら出来ると思うし手を挙げてみないか?」と前向きに、むしろ快く送り出したとするとどうでしょうか?このメリットは2つあります。

相互信頼のある優秀な“外部の人”を得る

上記のように快く送り出すと、送り出してもらった側からすればリーダーは「組織よりも私(個人)のことを考えてくれる良いリーダー」という風に見えることでしょう。本来、リーダーというのは組織をやりくりしてパフォーマンスを出さなければいけない立場のため、組織>メンバー個人という優先順位で考えてしまうこともあるでしょう。しかしそんな中で、メンバー個人(優秀な人)を尊重して新たなチャレンジの背中を押してあげることは組織よりメンバーの方を優先していることに他なりません。世の中には、部下に人気のあるリーダーとそうでないリーダーがいますが、前者にあたる一緒に働きたい信頼できるリーダーは、こういう人間像なのではないでしょうか。
そして相互の信頼関係のある優秀な人が自分のチームの外にいるということは、外部との太いコネクション形成に繋がります。組織ワークでは、外部との連携をいかにスムーズに取れるかが明暗を分けることもあり、コネクションは重要な要素のひとつです。またそういったコネクションの形成には時間も手間もかかります。上記のように、前もって信頼関係が成立しているメンバーを率先して送り出すことで、その人を介してコネクションの起点を容易に作ることができるでしょう。

いずれは組織のパフォーマンス向上につながる

ここまでは、出ていった優秀な人は戻ってこない前提でのお話になりますが、場合によっては送り出した優秀なメンバーが再びチームに戻ってくることも考えられます。例えば、関連会社への任期付き出向なら確実ですし、会社内の部署移動の場合も戻ってくる可能性があります。このような場合、あえて送り出した優秀な人材は外部で経験や知識を得てさらに成長していることが期待できます。
しかも自チームでは、上位2割を取り除いた状態を経ているため新たな上位2割が生まれているでしょう。そこに、元々上位の2割に当たっていたメンバーが追加されるため、このタイミングでは一時的に262の法則を打破した形で組織力を強化できている状況になります。

しかしながら、262の法則によればこの状態は長くは続きません。いずれは上位・中位・下位の割合が22:6:2に落ち着いてしまうためです。対策として、機会を見つけては、優秀なメンバーを部分的に外部に送り出し、戻ってくるようなサイクルを作ることが挙げられます。同じメンバーで停滞させるよりも、常に外部との人の入れ替えがある、揺らいでいるような状態をあえて維持することが長期的な組織力の強化が見込めるのではないでしょうか。



まとめ

262の法則に基づいて組織を成長させる戦略を考えてみました。

  • 下位2割を取り除いても組織のパフォーマンスが上がるとは言えない
  • 上位2割を取り除き、中位・下位の8割が成長できる・新たな上位2割を育める環境を作る
  • 上の2の人に旅をさせる。無理に束縛しない。かわいい子には旅をさせよ。
  • 定期的に上位2割のメンバーを入れ替えることは長期的に組織を成長させる効果が期待できる

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